街中で見られるコンテナ倉庫の多くは、残念ながら、未だに「野積みコンテナ」と呼ばれる、建築確認を取得していない違法な建築物です。この「野積みコンテナ」への国交省等の行政機関の対応としては、平成元年の旧建設省住宅局建築指導課長通達(平成元年7月18日住指発第239号)を皮切りに、現在までに多数の行政指導が行われて来ました。それらの指導に共通する内容としては、「海上輸送用コンテナ」を利用した倉庫は、「野積みコンテナ」であっても建築基準法に規定する「建築物」となるということです。この内容に照らすと、「野積みコンテナ」を設置する場合は、一定の場合を除き、地方公共団体に所属する建築主事や、行政庁から指定された民間の確認検査機関より建築確認を取得しなければならないことになります。
尚、平成16年に国交省より出された「コンテナを利用した建築物の取扱いについて(技術的助言)」(平成16年12月6日付国住指第2174号)では、各都道府県建築主務部長を名宛人として、既に設置されているコンテナについても、建築基準法に適合しない事項がある場合には、違反建築物として、必要な措置を採ることを依頼する内容となっております。
また、建築確認を取得する場合は、管轄消防署とも協議してその確認ないし承認を得ることが必要となりますが、建築確認を取得していない「野積みコンテナ」の多くは、構造計算をしていないので、地震や台風等に対しては固より、管轄消防署への届出はおろか消火器すら設置していない状況ですので、火災に対しても、非常に脆弱であり、安全性に欠ける状態であると言えます。
弊社の独自調査によると、前記の様な行政機関の動きを反映してか、ここ最近では、コンテナ倉庫のみならず、コンテナやコンテナに似せたモジュール(以下、総じて「コンテナモジュール等」と言います。)を利用した簡易店舗や事務所などを扱う事業者が、これらの建築物を設置する際に、建築確認(仮設申請含む)を取るケースが増えて来ました。
しかし、残念ながらその多くは、申請書ないし同付属設計図書を整えたに過ぎないものというのが弊社の見解です。その理由としては、建築基準法が規定する建築物である場合、その「構造耐力」(法第20条)及び「建築材料の品質」(法第37条)の各規定に適合している必要があり、それは少なくとも、後述する一定の構造強度を担保された建築物であり、且つ、その建築材料は、指定建築材料ごとに国土交通大臣が指定するJIS規格に適合するものであるか、または、指定材料ごとに同大臣が定める安全上、防火上または衛生上必要な技術基準に適合するものであると同大臣に認定を受けたものである必要があること(平成12年5月31日付建告第1446号)を意味しますが、前記の「野積みコンテナ」含む、コンテナモジュール等を扱う事業者は、殆どの場合、中国と韓国にあるコンテナ製作工場に製作依頼しているのが実情だからです。中国と韓国では、現状においては、前記のJIS規格品や大臣が定める技術基準に適合する材料等を入手することは容易ではないことに加え、一定の構造強度を担保された建築物であると言う為には、少なくとも、コンテナモジュール等を鉄骨建築物として捉え、その製品の品質や工程検査等に係る管理体制、並びに製作設備や技能者の能力確保等、ソフト、ハードの両面における鉄骨製作工場としての総合力が必須であると言えますが、日本と基準が違うこれらの国々でそれらが備わっていることを証明することは非常に困難を極めると言えます。
従って、これら中国・韓国製品が建築確認を取得するのは、本来、容易ではない筈であり、どの様な方法でその高いハードルをクリアしているのかは想像に難くありません。(民間の確認検査機関をして、違法または不当に取得しているのだとしたら大きな問題です。)
弊社は、コンテナモジュール等の業界の中にあって、前記の状況に違和感を覚え、創業時より、弊社が販売するコンテナモジュール等については、一級建築士事務所と提携した上、中国の提携工場をして、後述する国土交通大臣が認定する鉄骨製作工場Rグレード資格適合基準(Rグレード性能評価適合基準)で製作をし、更には建築確認を取得して参りました。(提携工場には当該資格を平成21年12月に取得させ、その後、製品製作ないし設置時の品質を管理するべく自社においても平成22年4月に一級建築士事務所を開設するに至る。)
然るに、弊社は、以前ニュースを沸かせた「耐震偽装問題」以降、改正建築基準法に始まる建築業界及びその周辺業界への一連の規制強化の動きがあり、業界の健全化が進む絶好の機会であると、その動きが加速されることを期待しておりました。しかしながら、現在その動きは失速している様に見受けられ、そうしている間にも、違法性を認識しながらコンテナモジュール等を販売している卸売業者や同運送・設置している設置業者が増えてしまっていることに憤りを覚えると共に、これが第二の「耐震偽装問題」を生むのではないかと強い危機感さえ感じます。
そこで、今般、弊社といたしましては、業界の健全化に寄与し、更にはそのイメージの向上を図るべく、より積極的に問題を提起ないし適示し、かかる調査を推し進め、その情報を公開していくなど、然るべく措置を採っていくことを決意いたしました。尚、当然ですが、自社ないし提携工場の品質もより一層向上させていく必要があることは言うまでもありません。
建築基準法第68条26(構造方法等の認定)第3項に基づく業務であり、鉄骨製作工場において製作された鉄骨溶接部の性能について、同法施行規則第1条の3(確認申請書の様式)第1項に規定されている国土交通大臣の認定を受けるために必要な評価の審査のことを言います。
この評価基準に適合する為には、少なくとも、次の要件をクリアしなければなりません。
以上
尚、当該性能評価は、即ち「鉄骨溶接部の性能を評価すること」であると言える為、上記の中でも特に、各種材料はJIS規格品を用いなければならないことや、溶接技能者はJISのライセンスを保有していなければならないこと、更には、溶接条件の管理ないし入熱及びパス間温度の管理、超音波探傷検査等については、特に重要な要件となります。
追って、コンテナモジュール等を扱う事業者が製作依頼する、中国・韓国のコンテナ製作工場では、残念ながら、これらの要件を満たす工場は殆ど存在しませんことを申し添えます。